フラントイオ・ビアンコ社 訪問記

農園に着くと、そこは広大な山の中腹でした。山のあちこちから煙が上がっています。オリーブの木が大きくなりすぎないよう、はらった枝を燃やしているのだそうです。ブルーナ家の一族は、1800年代から200年かけて代々、手や牛車で石を運び、段々畑を作ってきました。あちらこちらに牛車の通った道のなごりや、雨宿りのための石造りの穴などが残っています。彼が所有しているオリーブの木は8000本、海抜約250mから640mまでの山肌に広がっています。

遠くの山の中腹に、美しい教会を中心にした、小さな集落が見えます。「あれがil mio paese(ぼくの村)だよ、後で案内しよう」、と彼の指さしたそこは、彼自身と、幼なじみの奥さんの生まれ育った“AURIGO”村。今もブルーナ家の自宅があり、夫妻はもちろん、90歳代のお母さんが暮らしているそうです。

「AURIGO」村

さらに場所を移動すると、空気の動く音さえ聞こえるような、静かな場所に行き着きました。谷間では、昔ながらの手作業によるオリーブの地道な手入れが続いています。「ここが一番好きな場所なんだよ。」と言われ、足下にある肥料の話など聞いているうちに気がついたのですが、そこは元気いっぱいな下草に埋め尽くされた、自然のままのオーガニックのオリーブ畑でした。

有機農法は「農薬・化学肥料を使わない代わりに害虫などの存在を認める」と言い換えることが出来ます。しかし、ここは標高の高さや地形から、害虫が発生しにくく、農薬を使う必要がない。自然に有機農法が成立する貴重な環境です。とはいえ、機械の入れない、急勾配の畑で手作業による栽培と収穫は危険も伴い、非常に重労働ですし、収穫量も伸びません。

何カ所か場所を移りながら、時間をかけて農園の隅々まで案内してくれました。木の剪定方法や状態など枝を手にとって細かく丁寧に教えてくれます。木々を自分の子供のようにとても慈しんでいるように見えました。「ここも有機農法をやめれば収穫量は2,3倍になるけど、それはしたくないんだよ。見てごらん、ここは生命の息吹が一杯だろ。私の一番好きな場所なんだ」。こういう職人がイタリアにもいました。このような仕事を彼らは代々続けてきました。この地方の人たちが、イタリア一忍耐強いと言われる由縁ではないかと思います。このオーガニック畑は、彼の理想郷です。

牛車で石を運び手で積み上げてつくった段々畑

雨宿り用の穴

下草もしっかり生えている自然なままの畑(1)

下草もしっかり生えている自然なままの畑(2)