フェリチェッティ社 訪問記

それぞれを一通り購入して試食してみると、驚きの連続でした。

まず茹で時間。表示時間通りに茹でれば、きっちりアルデンテに仕上がります。茹で上がったパスタを割ってみると「白い芯が今まさに透明なアルデンテになりました」の状態です。これがすべての商品に関して完璧にできているのです。どんなパスタでも、アルデンテのタイミングを見極めるため、茹で上がり直前の味見は大事だと思います。表示時間と実際の茹で上がり時間には、多少の誤差が出ることがよくあるからです。ですが、フェリチェッティ社のパスタに関しては、私は茹で具合確認の味見をしていません。茹で汁の塩加減だけです。そのくらい、信頼がおけるものです。

それに食感。Granoduro(デュラム小麦)に関しては、これまで経験したことのない繊細さと、なめらかさでした。タリアテッレ(卵麺)などは、手打ちの生麺よりもなめらかなくらいです。ナポリ周辺特産の、あのソースがよく絡む適度な「ザラザラ感」も大好きなのですが、全く別のパスタでした。クリーム系ソースとは抜群の相性でしょう。一方、Farro(スペルト小麦)は力強い香ばしい香りは残しながら、もっちり、しっとりとした食感を誇ります。さらに、古代種であるKamut(カムット小麦)は、ずっしりとした食べごたえと、小麦本来の濃厚な味が印象的です。

そして緻密さ。WEBでフェリチェッティ社の情報を探しあて、ここでもびっくり。すべての商品の規格が公開されているのですが、パスタのサイズは、溝の間隔や深さまで、何と0.01ミリ単位で決まっています。「なんという人達」これが彼らに対する第一印象です。

フェリチェッティ社の公開しているpennne rigate(ペンネ・リガーテ)の規格。まるで精密機械の設計図のようではありませんか?

小さなパスタ工房は、100年前に地域の人達のためにはじめました

フェリチェッティ社は約100年前、まだこの地がオーストリア=ハンガリー帝国の一部であった1908年に創業しました。当時は今以上に雪に閉ざされていて、冬場は歩くのさえ大変な状態。また牛や馬が物流の主役だったので、長い冬の間、プレダッツォを含めた近隣の村々は、ふもとの町からは完全に孤立してしまうため、食糧自給システムの構築は至上課題であったそうです。

このような状況の中、ふもとの町と通行可能な夏場に小麦粉を運び、保存のきく乾燥パスタを作るという構想が生まれました。そして現社長リカルドさんの曾祖父にあたるヴァレンティーノ・フェリチェッティ(Valentino Felicetti)さんが、地域のために一念発起、パスタ工房を始めたのだそうです。

創業期のフェリチェッティ社

二度の世界大戦と、大きな火災を乗り越えつつも、豊富な水資源や、燃料となる木材、澄んだ空気など恵まれた環境を活かし、フェリチェッティ社は次第に大きくなっていきました。この山間の小さなパスタ工房が生き残っていくために、特に大切にしたのは、美味しく高品質で、かつ効率的な生産技術の開発。この技術の蓄積が「SELEZIONI」シリーズ開発の土台になっているようです。創業当時、地域の人々の食料調達のために作られた小さなパスタ工房であったフェリチェッティ社も、現在は従業員40名、毎日70トンのパスタを製造する規模に成長しました。生産量の60%はオーガニック製品で、イタリア国内はもちろん、オーストリア、ドイツ、オランダ、ベルギー、スペインなどのEU各国をはじめ、米国、日本などにも輸出されています。