最初に社長のルチアーノ・マローニさんに会ったのは、2006年の10月頃です。シエナの人は「実直で頑固」と言われるらしいのですが、そのままの人でした。

マローニ社の本社兼工場。従業員4名の小さな会社です
その頃私達は、知人の依頼で「無濾過」のオリーブオイルを探しており、トスカーナ州を中心に、いくつかのオリーブオイルメーカーを回って商談をしていました。ところが、他のメーカーでは何も言われなかったのに、マローニさんには開口一番、「無濾過オイルは品質管理が難しいよ」と忠告されました。
無濾過のオリーブオイルには、当然濁りがあります。この濁りが「旨み」なのですが、彼が言うには「悪さもする」。例えばオリーブオイルは、製品温度が低くなりすぎると凝固して、沈殿物がビンの底に溜まりますが、この沈殿物が非常に酸化しやすいのが問題だと教えてくれました。オイルを注ぐ時、ビンを傾けるたびに空気に触れることになるこの沈殿物は、しばらくすると油臭い、酸化したにおいを発するようになるそうです。しかも、この沈殿物は、ビン詰めしてから時間が経っただけでも溜まるので、結果として無濾過のオイルは賞味期限が短くなりがちで、船便などでの長時間・長距離の輸送には向いていないと、時間をかけて細かく丁寧に教えてくれました。この時に聞いた話から、私達は輸送に航空便を使おうと考え始めました。
それにしても、日本から来た一介の小さな会社である(しかも、商品を買うかどうかも分からない)初対面の私達に対して、何時間もかけて、こんなに丁寧に説明をしてくれたのは、マローニさんだけでした。彼の誠実な人柄にふれ、とても信頼できる人物であるとの感触が残りました。
彼は帰り際に、濾過したオイルと、無濾過のオイルを1本ずつ、私達に手渡しました。「加藤くん、これを持って行きなさい。そして味見をしたら、どちらが美味しかったか知らせてくれないか」
後日、私達がマローニさんの作った濾過オイルの美味しさに驚き、彼に報告のメールをしたことは、ご想像にかたくないと思います。

マローニさんはオリーブオイルについて説明を始めたら止まりません
丁寧に丁寧に、一つずつ説明をしてくれます