同じ年の夏、再び訪問しました。二度目の訪問ということもあり、ヴァルターさんは明るく出迎えてくれました。さっそく、前回の訪問で見ることのできなかった農園や、工場を見せてもらうことにしました。
まずは、ジェノベーゼ・ペーストの原料である、バジルの仕込み現場です。ヴァルターさんの長年の友人でもあるロメオさんが、ヴェンチュリーノ社の近くにある、自身の工房を案内してくれました。2007年から、バジルもDOP(原産地保護呼称)制度がはじまったとのことで、正式に認証をうけた地元産のバジルを、一年分まとめて仕込んでいる最中でした。ヴァルターさんは、毎朝このバジル工房の前を通って出勤するそうで、「夏の時期、ロメオの工房が開いているか否かは、すぐ分かるんだよ。下の道路までバジルの香りが届くんだもの」と話す通り、工房の中は、出盛りの力強いバジルの香りでいっぱいで、圧倒されます。夏のこの時期、摘み立てバジルは、毎朝大量に届きます。それを何度も水洗いして塩だけ加えてペースト状にし、オリーブオイルでぴっちり密閉して、冷蔵保存するのです。添加物保存料は一切使用していません。ヴェンチュリーノ社は、このペーストに、自家製オリーブオイル、ナッツやチーズを加えて味付けをし、ジェノベーゼ・ペーストを作っているのです。

真ん中が友人のロメオさん、バジルの事を語らせたら話が尽きません。バジルの収穫期はリグーリアの人達にとっては、とても大切な時期。丁寧に仕込んで大切に保存されます

近くのポネンテ産のDOP認定を受けたバジリコ・ジェノヴェーゼ。やや丸みをおびていて、葉が厚いのが特徴です
ところで、このバジル工房の裏手に、オリーブの巨木がありました。タジャスカ種オリーブです。昔はイタリア中に、オリーブの巨木があったそうですが、前述したように、85年の大寒波で多くは枯れてしまいました。つまりこのような巨木が残っているのは、北側を高い山で守られているディアネーゼ谷ならではの事らしいです。いかにこの谷が温暖であるかの証明でもあると思います。
バジル工房のあとは、農園を一通り案内してくれました。ヴェンチュリーノ社のオリーブ農園は、急勾配の山肌にあるので、機械を入れて揺すったりする方法では収穫できません。オリーブの実は、全て手作業で摘み取ります。そのため、作業が危なくないように木の高さは抑えられていました。全体にずんぐり、どっしりと根付いている木が多い印象です。ヴァルターさんは大きな体に似合わず、軽快な足取りで山道をすいすい登り、木々を紹介しながら、樹齢や、しなければならない手入れの方法など細かく説明してくれます。夏のこの時期は雨が少なく、オリーブはじっと暑さに耐えているそうです。実はギュッと締まり、皮が固くなっています。そのおかげで害虫も実につかないとの事でした。

実り始めているオリーブ。この時期皮は固く、じっと雨が降るのを待っています